政治

混迷する中東地域情勢 イランの本当の意図とは

Saturday, November 17, 2012

東京 - パンオリエントニュース

都内の笹川平和財団ビルで、「イラン:エネルギーと中東の地政学」と題する講演会が開かれた。イランから駆けつけた中東研究所所長ケイハーン・バルゼギャール博士と、政治国際問題研究所国際経済エネルギー研究グループ所長のアリー・ビニアーズ博士が講演会に参加した。

- 混迷する中東情勢 -

バルゼギャール博士は、アラブの春などの一連の民衆蜂起から不安定化する地域情勢や、シリア内戦状態を踏まえ、エジプトとイランが中東情勢の安定の鍵を握るキープレーヤーであると指摘した。特にシリアに関しては、「シリアの未来を最優先に考える必要がある。内戦の結果がどうあれシリアで政治的変化が起きることは明白だ。米国大統領選後には米国がこの問題解決を先導しようとするだろうが、イラクやアフガニスタンでの間違いがまた引き起こされてはならない」とし、欧米諸国ではなく、中東諸国が中心となって解決する必要があることを強調した。

さらに、「シリア問題解決には各国の国益が絡む」とも述べ、「欧米の意図に左右されずに、自国の国益のみを考えながらシリア情勢にアプローチしているのはイランだけである」とした。この点についてはビニアーズ博士も賛同すると共に、「シリアと友好な経済関係を構築することはイランの国益につながる。特にエネルギー事業の分野においてだ。それが享受されるのであれば、次にどのような政権が樹立されるのかということはイランに対して問題ではないのでは」とコメントした。

イランは常に外国諸国の地域介入に強く反対してきたが、シリア問題に関しては一層警戒心を強めているようである。一方で、シリア問題への対応にはイランの国益追求が前提にあることも明確にした。

- 核開発の行方 -

イランの核開発疑惑を巡り、米国を始めとした西側諸国との亀裂を深めるイラン。今後の行方についてバルゼギャール博士は、「米国はイランの核の平和利用を目的とした核開発をある程度まで受諾せざるを得ない」とし、「オバマ大統領が再選されるだろうが、彼がイランの権利に対して理解を示さなければならない」と主張した。

イランの核開発に最も強い警戒心を示しているのがイスラエルである。このままイランが核開発を続けるのであれば、イスラエルは単独攻撃も辞さない姿勢を見せている。この緊迫した状況問題に対しビニアーズ博士は、「60年間も紛争が続く国に生きれば、自由に広い視野を持って考えることが難しくなるだろう。そして、イスラエルはゼロサムゲームのプレイの仕方をよく知っている。しかし、イスラエルが実際に攻撃を始めるとは思っていない」と述べた。

イスラエルは、米国にイランの核開発を阻むべく具体的措置を早急に講じるよう強く求めている。他国との関係も重視しなければならない米国とイランの関係改善は非常に困難な状況だ。

バゼルギャール博士は、「イランは科学技術的に発達している日本に一目置いている。米国とイランの関係構築には日本が仲介的役割を果たせると期待している」と日本の協力をあおいだ。

- 日本の役割 -

コメンテーターとして参加した同志社大学グローバル・スタディーズ研究科所属の中西久枝教授は、パンオリエントニュースのインタビューに対し、「今後の核交渉の過程で、イランが原則を変える方針がないということが非常によく伝わった。また、シリア情勢に関してはアサド政権崩壊の可能性を踏まえた上で注意深く情勢を観察し、イランの行動方針を決めようとしていると感じた」と語った、。米国とイランの関係構築のために日本の協が求められたことに関しては、「技術的に発達している日本が、両国の関係改善に貢献できる可能性はある。2010年にもそういった方向性が見えたが、当時の民主党政権の混乱が主な原因となっていい成果が出なかった」と話した。

講演に参加していたある日本人アナリストはパンオリエントニュースに対し、「今回のような講演を通じ、イラン側の直接的な声が日本人専門家等に届けられれば、政府に米国とイランの仲介を働きかけることにつながるかもしれない。しかしながら、誰が適切で、誰が実際に仲介を行っていきたいか、仲介のために誰にアプローチすべきかという現実的な問題があり、簡単ではない」と述べた。民主党の鳩山由起夫氏はどうか、という質問に対しては、「鳩山氏のイラン訪問は歴史的に見ても大きなインパクトを生んだが、残念ながら彼は米国、そして自身の党から十分な指示が得られなかった。非常に残念だった」と答えた。

現在は量が激減したが、長い間原油をイランから輸入してきた日本にとって、イランとの関係悪化はあまり好ましくない。しかしながら、日本は依然として米国からの強い影響下にある。日本は両国の関係改善にどのように関わっていけるのだろうか。いずれにせよ、イランとの直接的対話を今後も継続していくことが鍵になってくるだろう。


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