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カタールでの生活に「湾岸諸国との外交断絶による影響なし」

Monday, September 30, 2019

パンオリエントニュース

(東京) 「カタールに赴任してから不便を感じることは全くない。」三菱UFJフィナンシャルグループのドーハ出張所長を務める菊池昌人氏は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦4カ国がカタールと国を断絶していることから、現在のドーハでの状況について、30日、ジェトロで開催されたビジネスセミナーで、所長としてではなく菊池氏個人の見解を語った。

アラブ4カ国がカタールとの国交断絶をしたのは2017年6月。理由はカタールによる「テロ組織支援やイランとの親密な関係」として、国境や空域の封鎖に加えて人や食料・物資の往来も制限した。昨年5月下旬には対抗措置としてカタールは4カ国で製造された商品の禁輸と販売禁止を発表した。

菊池氏は、外交断交の影響をカタール国内での生活で感じることは全くないという。一方、4カ国がカタールに対して要求している13項目について言及し、「独自外交をとっているカタールに対して、立場上の違いは無論あると思うが、サウジアラビア・UAEからのやっかみをカタールが受けているのでは」という印象を現地で暮らしていて受けたという。要求にはイランとの秘密連携を控えることやトルコの軍事基地の縮小と協力の停止が含まれているが、「カタールはイランと同じガス田を共有しており、イランとの関係は重要。トルコについても、食料品はトルコから結構入ってきており、またトルコ企業はカタール市場への進出をかなり狙っている。カタールの空港拡張の案件でもトルコ企業が入札に参加すると聞いているし、カタールとトルコは切っても切れない関係にある」とした。

カタール国内での生活で不便はないとするが、国外に出るときは少し話が違うようである。「ドバイに支店がありよく行くが、前は1時間少しで行けたのが今はオマーンやクウェートを経由して行かなければならず、6~7時間通算でかかるようになりかなりの手間がかかる。また、ドバイに行って一番困るのはカタールで使用している携帯が繋がらなくなること。ドバイに着いたら現地のSIMカードに入れ替えて使っている。しかし、逆にドバイからカタールに来る人はドバイの携帯がそのまま使えている。カタールは断交国側から来る人に特に制裁などしていないし、カタールは懐が深いと思う。」

緊張が高まっているとされるホルムズ海峡事情については、「警戒したところで(もし武力衝突が勃発したとしても)勝者がいない。個人的な見解としてはサウジアラビアやUAEはアメリカを上手く焚き付けてイランと戦争してもらおうと思っているのかもしれないが、米国大統領のトランプ氏はすっと引いたから、戦争をする相手がいない。イランはイランで余裕を持った形にあり、現状では戦争は起きにくい」とした。また、先月14日に起きたサウジアラビア所有の油田に対するドローン攻撃について、「爆撃されたのはカタールとサウジアラビア国境から200kmくらいのところと聞いている。この点、ドローンやミサイル攻撃は簡単にカタールにも届くということだし、もし本当にイエメンからきているのであれば怖いと思う。イランも対岸だから狙おうと思えば一発。しかしその後の被害がそこまで大きくならなかったことからすればそこまで本気ではなかったように思う」として、誰がやったかわからないことは怖いが、それでカタールにとって今大きな問題があるかということは別だとした。

外交関係断交そのものについてはGCCの組織としての機能の弱体化を指摘。「特にサウジの状況の変化が大きい。昨年11月のカショギ事件は上手く丸め込んだ形になっているが、発言力が少し低下したように思える」とした。一方、カタールについては「国内ではタミム首相が人気で、国がすごくまとまっている印象に見える。若い39歳の首長の下、自国の政策運営ができている」と評価した。



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