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「ポリコフスカヤ4周年追悼」  チェチェン人日本亡命者が出席

Tuesday, October 5, 2010

「ロシアの失われた良心」と評され、プーチン大統領時代にチェチェン共和国で起きた人権侵害を告発した記者アンナ・ポリトコフスカヤー。2006年10月7日、プーチン大統領の誕生日に、自宅アパート前で暗殺された彼女の「4周年追悼集会」が、日曜日、都内の文京シビック・センターで開かれた。ポリトコフスカヤの追悼映画が公開され、後半では、チェチェン人日本亡命者がパネリストとして参加、ロシアの軍事侵略による「母国チェチェンの惨状」と「日本の難民迫害の状況」を語った。


映画『アンナへの手紙』は、生前のポリトコフスカヤのインタビューを収録したドキュメンタリーで、彼女が編集員を務めていた独立系新聞「ノーヴァヤ・ガゼータ」の同僚ら、人権活動家、2人の娘と息子、そして元夫などの回想録なども登場。遺族らがそれぞれ亡きジャーナリストへの想いを語る。

ポリトコフスカヤ記者殺害の真相は未だに明らかになっていない。映画の中には亡命先の英国で毒殺された元FRB、アレクサンドル・リトビネンコが姿を現し、「彼女を殺したのは間違えなくプーチンだ」とコメントを残している。「暗殺事件は記者に対する見せしめだった」「記者は平穏に暮らしていくことが出来る。政府を支持し、反体制的なことを書かない限りは」など現役、ロシア人記者らの声も録画されており、これら一連の証言から、「言論の自由を封殺しようとする」旧ソビエト連邦時代の旧体制に戻っていく現ロシア国家体制が浮き彫りになって行く。

ジャーナリスト林克明さんによると、彼女が暗殺されるまでに書いた511本の記事の大半は、チェチェン問題に関するもの。具体的な人名、場所、日時などを詳細に報告していたという。殺害の前日まで、チェチェン共和国の第3代大統領ラムザン・カディロフの私兵隊がチェチェン人らに行っている拷問、賄賂、暴行、誘拐などの記事を執筆していた。

日本人にチェチェンの情報を発信しているチェチェン・ニュースの編集者、大富亮さんは、「年々、アンナ・ポリカトフスカヤへの関心が減っている。チェチェンのために最期の数年を捧げた人だ。チェチェンのためにここまで克明に現状を書いているロシア人ジャーナリストを忘れないでほしい」と語った。

集会後半では、チェチェンの戦火から日本に逃れてきた27歳の難民、シャルハン・ガカーエフさんが、チェチェンに対するロシア軍の弾圧や軍事占領などについて語った。「アンナ記者だけでなく、チェチェンに関わった多くの外国人そしてチェチェン人が命を落としている。ロシアは都合の悪いことを話す人間を次々から抹殺している」とロシア政権を批判。続いて、ガカーエフさんは、「現在、海外メディアはチェチェンに入国することが許可されておらず、国内ですら、情報が限られている」とメディアの状況が一層厳しい状況になっていると指摘する。「世界は、チェチェンで今何が起きているか知らない」 

「今でもチェチェンでは戦争が起きている。第1次・2次チェチェン戦争で、50万のチェチェン人が命を落とした。が、誰も文句を言わない」とガカーエフさんは世界のメディアの状況を批判した。

若きチェチェン人は、母国で命を追われる身となり3年前、日本に逃げてきた。しかし、日本の難民に対する態度は非常に冷たいと語る。「日本国家は外国人や難民に対して厳しい」とガカーエフさんは当惑の様子を見せた。日本政府は難民条約に加わっていながら、ほとんどの難民申請者を認定せず、就労の禁止や収容などの扱いをつづけている。ガカーエフさんは、難民申請しているのにも関わらず、2年が経過しても放置状態で、難民とは認められていない。

千葉景子法務大臣は、2009年夏の民主党マニフェストで、「難民の解決」を掲げていたもの、現状は悪化する一方だ。難民支援団体のボランティア、周香織さんによると、民主党が政党を勝ち取る2009年夏直前まで、東京入管管理局に収容されている外国人数は100人だったが、現在では、収容者が700人と増加しているという。

現在、国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルはフランス、スイス、フィンランド、英国、などで署名を展開中。「言論の自由」「ジャーナリストらの命の安全」、「チェチェンなどのコーカサス地域の人権侵害に対する徹底調査」などを、ロシアのメドベージェフ大統領に求める。アムネスティ日本も署名活動を開始。来月11月に提出する予定だ。

Photo Credit:ジャーナリスト 林克明

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