外交

「安田氏誘拐 - アルヌスラ戦線の沈黙に疑問」

Monday, March 21, 2016

アフマド・アリ
パンオリエントニュース特派員

ダマスカス- ダマスカスの政府筋関係者は、日本人ジャーナリスト安田純平氏誘拐をアルヌスラ戦線が正式に表明をしていないことについて、その理由として、国際的な認知は得たいがテロリストとしてレッテルを貼られることを避けたいためだと述べた。
シリア在住のパンオリエントニュース特派員の単独取材に対し、来期のシリア国会議員選挙の立候補者であるこの関係筋は匿名を条件に下記のように語った。
「もしアルヌスラ戦線が昨夏から行方不明になっている日本人ジャーナリスト安田氏誘拐の犯人であるならば、そしてその可能性は極めて高いが、公式にこの誘拐を認めない理由は2つ挙げられる。まず第一に、彼らが誘拐を正式に認めると国際社会からテロリストのレッテルを貼られることになり、彼らをシリアの穏健派反政府組織と位置付けようとしている地域の国々に恥をかかせることになってしまうこと。そして2つめは、アルヌスラ戦線は誘拐によって日本政府に、安田氏救出のため、域内各国に支援を要請するように仕向け、彼らの認知度を高めたい狙いがあるのではないか。しかしここで疑問が沸くのはなぜ彼らはそれをブローカーにやらせたのか?なぜ、「ホワイトライトハウス」と呼ばれる自前のメディアを使わないのか?

自らを活動家、仲介者兼ジャーナリストと名乗るターリク・アブドゥル・ハクは、先週安田氏のビデオを公開し、日本のメディアに対し、これはアル・ヌール・チャリティというグループから入手したものだと伝えた。彼は安田氏がアルヌスラ戦線に拘束されているのは間違いないとし、救出の唯一の手立ては日本政府が仲介役であるこのアル・ヌールと交渉することだという。
パンオリエントニュースの記者が、なぜアルヌスラ戦線のメディア部隊ではない彼がビデオを入手できたのか尋ねると、彼は安田氏生存の証拠を要求したところビデオが出てきたと述べた。彼は安田氏を救出するためにビデオを要求したと述べた。ダマスカスの関係筋は、日本においてこのニュースが大々的に取り上げられればアルヌスラ戦線に注目が集まり、身代金をもらってこの危機を首尾よく終わらせることができるという算段であろうという。

シリア人の多くは、外国人も含めこういった誘拐の多くが身代金目的で、拘束されている仲間の開放などを求める政治的な目的をもったケースは少ないと思っている。実際シリアでは失業者や犯罪者によってこのような誘拐が格好のビジネスとなっているとする意見もある。シリアの反政府勢力に誘拐された経験のある一人の被害者は、誘拐グループの話として、シリア政府の治安部隊に拘束された仲間との交換が目的だと聞かされたとのことである。事態が悪化しているシリアでは暴力や無法状態が常態化し、それに伴って経済状態も崩壊の一途をたどっている。このような背景のもと政府、あるいは反政府勢力のコントロールのもとで誘拐も頻繁に起きているのだ。誘拐は手っ取り早く金を手にする手段ということだ。

誘拐を専門とする犯罪集団が多く生まれ、富裕層や、医者、学者、エンジニアなどといった専門家のみならず一般市民までもがその標的となっている。
多くの場合、このような誘拐事件は被害者の家族が身代金支払いを拒否したり、あるいは支払えないなどの理由から被害者の殺害という形で終わる。また、身代金を支払ったにもかかわらず、被害者が帰らぬ人となって家族のもとに戻るようなケースもある。
外国人がこういった誘拐の被害者になる場合は、特に、日本人含むジャーナリストや記者などのメディア関係者の誘拐は多くがシリア北部および北東部で起きている。この地域はISや、アルヌスラ戦線、アフラル・アル・シャムその他の武装集団の支配下に置かれている。
誘拐の多発は、比較的安全なハマ、タルトゥース、ラタキアなどの地域も含めシリア社会全体に大きな影響を与えている。


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