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イスラム過激派対策としてアサド政権存続を・中東専門家高岡氏

Tuesday, October 15, 2013

パンオリエントニュース

中東専門家の高岡豊博士は、15日、中東調査会主催の中東情勢分析発表会にて登壇し、混迷するシリア情勢に関してバッシャール・アル=アサド大統領が退陣することは戦闘を沈静化させる上でプラスに働かないという見解を示した。

「化学兵器を国際社会が管理・破棄しても事態は沈静化されず、シリア国民が置かれている状況も改善されない。反体制派勢力は統治能力を持たないが、戦闘能力だけは維持している。アサド政権が崩壊した折には、後がどうなるかわからない」と述べた高岡氏は、アサド政権が改善・回復するという前提でどう将来を築いていくかということが、これ以上シリアから犠牲者を出さないために妥当な手段の一つであるとした。

また、アサド政権はイスラム過激派対策としても重要な役割を担っていると説明。『イラクとシャームのイスラム国』やアル=カイダといった過激派組織を例に上げ、「アラビア半島やイラクなどの国でやっては許されない行為が、シリアでは反体制派であるというラベルを掲げれば許されてしまう。テロ対策の抜け道が出来てしまった」とし、シリア紛争の当事者としての過激派組織に対する外部の態度の変化を批判した。反政府軍に参加している過激派組織に資金を流すことは他国で行われるテロ行為を支援している(同主体が行っているため)ことに繋がるとした。さらに過激派対策を政府主導で行っている中東国の政権はアサド政権のみであると指摘。「例えばトルコ政府は過激派が戦車に乗ってトルコとシリアの国境を行き来しても何もしない。行き先がシリアで限り」と述べ、イスラム過激派対策の一部としてアサド政権を機能させるという発想をとらざるを得ない面があるとした。

米ロ主導で政治的解決が模索されているが、当事者間で『政治的解決』の意味が違う点に留意する必要があることを高岡氏は訴えた。「反アサド体制派である米国やフランス、サウジアラビアなどはアサド大統領が退陣が政治的解決の第一歩と考えている。一方で、アサド政権やその支持国はあらゆる政治勢力が参加する国民対話を経て改憲、議会選挙を行うことが紛争の政治的解決で、その一歩としてテロリスト(反政府軍の中の)撲滅を掲げている」と、当事者間で政治的解決のコンセンサスが未だないため、米ロが発表したように11月中になんらかの国際会議が開かれる可能性は低いと述べた。

シリア紛争を解決させることは事態の沈静化が急務であることを強調した高岡氏は、反体制側が外部の圧力を誘発することで戦況を変えることを目論む面があることから、化学兵器を誰が使ったのかという点に関わらず、反体制派を支援しているトルコ、ヨルダン、レバノン、サウジアラビア、カタールといった国々も状況改善のための責任をとる必要性があるとした。(東京 - 柴田真也子)

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